理事長挨拶

 少子高齢化が進むなかで日本では人口高齢化の社会的影響に注目して、いち早く介護保険制度を導入するとともに医療との連携を強化すべくさまざまな施策が行われてきた。他方、少子化は高齢化と表裏の関係にあるにも関わらず、社会政策では看過されてきたきらいがあったことは否めない。
 近年、男女共同参画社会の建設を基盤に新しい経済体系の構築が模索されるようになり、これを実現するためにも女性の重い負担となる妊娠、出産、子育てに対して社会的支援が不可欠との共通認識が形成されるようになった。こうした方向への転換はとくに21世紀に入ってから顕著になり、「少子化対策基本法」や「地方創生法」などのマクロ政策の時代からミクロ政策へ入ってきている。  政府は2014年に妊娠・出産包括モデル事業を開始し、これは子育て世代包括支援センターの整備につながる事業である。2016年にはこれを法定化し、2017年から実施に入った。この度「子育て世代包括支援センター業務ガイドライン」及び「産前・産後サポート事業ガイドライン」や「産後ケア事業ガイドライン」が策定された。
 産前・産後サポート事業および産後ケア事業の対象者は子育て世代包括支援センターの利用者のうち、基本的に社会リスクの高い妊産婦であり、全妊産婦の数からすれば一部に過ぎない。公的予算で実施される事業であり、財源が限られている以上社会リスクの高い妊産婦が優先されるのはいわば当然である。本事業が始まってから年月が経ってないこともあって、全国的に普及するまでまだ時間が必要であろう。量的な拡大ばかりでなく同時に質的な担保もこれからの課題である。
 また、少子化対策という本来的な意味からすれば、社会的リスクが顕著でなくても、それ以外の妊産婦も大なり小なり出産・育児に困難を感じているはずで、すべての妊産婦にこのようなサービスが受けられるシステムが構築されることが理想である。
 日本社会にこうしたシステムを構築するにはかなりの努力が必要である。政府事業を一層推進する一方、同時に民間活力を導入することも欠かすことができない。しかしながら、民間活力を導入するにしても現在のところ事業モデルが見当たらないため一朝一夕に実現することは困難である。そのためには社会環境の整備、事業モデルの研究、官民一体の協力が重要である。
 本学会はそのドライビング・フォースとなるよう、有志らと共に平成29年7月に「日本産前産後ケア・子育て支援学会」を発足させた。今後、調査研究事業、広報事業、関係団体の連携等を通して活動する予定である。職種を超えて多くの関係者、団体の参集を期待したい。

2017年9月28日
理事長 林 謙治
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