「日本産前産後ケア・子育て支援学会」設立趣旨

 少子高齢化が叫ばれてから久しく年月を経ていますが、それに伴う社会問題、経済問題への対応が社会保障改革をテコにさまざまなインフラが整備されてきました。そのなかでとくに高齢者医療・福祉対策の進展には目を見張るものがある一方、少子化問題に対して実効のある対策が十分練られてきたとは言えない一般的な認識があります。
 女性の社会進出が日本の将来の社会設計に不可欠な要素として位置づけられているなかで、近年政府は妊娠・出産・育児の切れ目のない支援が必要であることを強調しています。しかしながら、これに向けるインフラ整備は保健医療的な対応だけで不十分であり、日常生活レベルのサポートまで含めないと実効性のある目標に到達することは困難であることは明らかです。
 出産・育児のプロセスで女性が遭遇しがちな問題は心身の疲労、経済的な負担、社会復帰への不安などがあり、社会的なリスクを抱え込みやすい状況です。このような状況を誘発しやすい生活環境を観察すると、現代社会において母親は仕事と育児など多忙なために時間に追われ、妊娠・育児に関する正確な情報が得にくく、また、経験豊富な支援者が周囲にいないという環境条件の欠如が問題の深刻さを増幅させていると言うことができるでしょう。
 一方、社会形態が過去の大家族制度から核家族制度へと完全に変容しているにも関わらず、母親の日常的な負担はややもすれば伝統的な価値観のなかに押し込まれ、今なお個人的な努力の問題として置き換えられてしまう社会通念が根強く残っています。このような社会的なバリアを乗り越えない限り、女性の活発な社会的進出への期待もしくは少子化の解消は絵に描いた餅同様です。
 政府事業は基本的に予算措置に基づいている以上、すべての妊産婦、子育て中の母親に対して日常生活全般にわたって十分な援助をすることは容易ではありません。したがって、この度立ち上げる「妊娠、産後ケア・子育て支援研究会」は研究者の構成員が中心となりながらも、既存の関係民間団体および健康産業・育児産業等と協力して、民間の知恵・工夫などの活力を最大限に生かすことで、現代社会にふさわしい出産・育児のインフラを開発することを目的とする団体です。こうした活動は政府が目的とする少子化対策を側面から援助することにつながり、公益性がきわめて大きい社会貢献であると信じています。

起草者 林 謙治

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